大学時代の話10~世界のパン工場勤務~
俺は横浜のとあるパン工場で働いたことがある。
なぜ働いたのか、それは単純にお金がほしいから。
では、なぜそこで働いたのか。
それは他と比べて給料が魅力的だったからに他ならない。
夜勤で1日働いて11,000円くらいだったんじゃないかな。
これは、交通費込みでの給料ね。
ちなみに、今から15年前の話だけど。
今に換算してこれがいいのか悪いのか分からない。多分、そんなに変わっていないんじゃないかとは思う。
当時の俺は怖いものなし。
というか、身の程知らず、世間知らずだった。
俺はアルバイトと言えば日雇い派遣を一生懸命頑張っていたわけだけど、タウンワークでそれを見つけた。
それが、パン工場勤務。
埃まみれになる倉庫勤務よりマシなんじゃないかと思って、俺は即この求人に申し込みをした。
結果、俺は想像を超えた労働を経験することになる。
人間にとって、きつい仕事ってなんだと思う?
忙しい仕事か?
肉体労働か?
俺はこの時思ったよ。
何にもしないことだって。
何にもしないってのは大げさだけど、とにかく暇で仕方なかった。
どんな仕事してたかって?
俺は、1回しかこの仕事をしなかったから、詳しく語るレベルにはない。
けれども、俺が経験したそれをここに記しておく。
俺が勤務した先はハードロール課。
なぜここに配属されたのかは分からない。
100%、適当に割り当てられただけだと思う。
何をやるのか分からず持ち場につかされた俺に与えられた仕事は、ベルトコンベアの上を、大量のフランスパンが遠くから、ゆっくりと、大量に、延々と流れてくるから、俺は手元でスッ、スッと、コンベアの上でそれを仕分けるということ。
仕事自体はめちゃくちゃ簡単なんだよ。
今までにこんな簡単なお仕事に出会ったことがないレベル。
でもね、そのせいでマジで、時間が全然過ぎないんだよ。
気が狂う。
いや、狂った。
そ・・・そろそろ、1時間は過ぎたんじゃないかな・・・。
と、思って工場に備え付けてある時計を見ると、
20分しか過ぎていな・・・いだと?!
君たちがパン工場で働く前に 言っておくッ!
おれは今、パン工場のお仕事を ほんのちょっぴりだが 体験した
い…いや… 体験したというよりは まったく理解を 超えていたのだが……
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「おれは フランスパンの前で1時間を過ごしたと
思ったら まだ、たったの20分しか過ごせていなかった」
な… 何を言っているのか わからねーと思うが
おれも 何をされたのか わからなかった…
頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…
まさに、こんな感じ。
仕事をもらっておいてなんだけど、そこも機械化しちゃえばいいのにって思ったのを覚えている。
で、まぁ、仕事はそれだけ。
他にも細かい仕事はあったけど、まじでこれだけ。
これをね、機械音だけする、静かな工場でやるんだよ。
朝までずっと。
でもね、俺の働いている工場には窓はなかった。
いつ朝が来るのか分からない。
そして、そのうち、いつ朝が来るか、そんなことすら考えられなくなる。
考えてみてほしい。
ひたすら、ひたすら、次か次へと手元に流れてくるフランスパンを、長細いのはこっち、丸いのはこっちってやるんだよ。
頭おかしくなるって。
体力には自信のあった若かれし頃の俺もさすがにこれには参った。
結果、1日で引退を決断。
もし、これを読んでいるあなたが、パン工場で働こうとしているなら、覚悟をしてほしいと思う。
帰り際に、同年代くらいの人に、どのくらいやっているのか聞いてみたら、「週3くらいです」って答えてくれた人がいた。
え、マジすか?
人には向き、不向きがあるから、全ての人にこれが当てはまるとは言わないけど、色々な仕事をした中でも、これは全く合わなかったな。
引っ越しなら気分転換にやってみてもいいかなって思うところもあるけど、パン工場勤務だけは本当に勘弁願いたい。